生理学分野
教 授:村本 和世
講 師:溝口 尚子
教育目標
生理学では口腔機能を学ぶ「口腔生理学」だけでなく、全身のあらゆる器官の正常機能についても学んでいきます。学習目標は、第一に口腔を含めた人体各レベルの臓器・器官の正常な働きを理解することにありますが、それだけでは生理学として十分ではありません。発展的目標としては、各器官の機能が全身的な観点から果たす役割・意義についても十分に把握することが挙げられます。なぜ口腔機能以外の学習も必要なのでしょうか?「歯科医師」として臨床の場において的確な治療を施すための基本となるのは、口腔の生理機能を理解することでしょう。しかし、口腔機能はさまざまな他の器官とも関連し、相互に影響し合って生命活動を営んでいるという機能統合の概念を理解することも「医療人」としては重要であると考えています。口腔領域の事象を全身的な観点から俯瞰する科学的思考を修得できるような教育を目指しています。
教育方針
生理学では、2年次に神経系をはじめとした「動物性機能」を、3年次には主に身体の自律機能に関連した「植物性機能」を教授します。従来は、まず全身の生理学を学んでから、応用として口腔生理学を学ぶという順でしたが、多くの学生が興味を持つ口腔機能の学習を積極的に早期から学ばせ、学習意欲を促そうとの意図があります。また、3年次には講義内容に関連した実習を、自らを被検者として生理現象を体験することで人体機能について理解を深めていきます。人類が根源的にもっているあらゆる自然事象に対する好奇心を喚起し、学習意欲を高めて自己学習を促していくことが何よりも重要であるとの方針で教育を行っています。そのためには臨床と関連するような基礎歯学(医学)の最新の知識を厳選の上、アップデートとして学生に与えていくことも重要であると考えています。
研究内容
生理学分野では、口腔周辺からの感覚情報が、摂食などの個体の行動、嚥下や咀嚼などの口腔の機能にどのように影響をおよぼすのかを神経科学的に解明することを研究の目標としています。そのためには、関与する神経回路を解明し、その作動原理を明らかにしていく必要があります。現在は、味覚・嗅覚(化学感覚)の生理学、唾液腺の生理学などを、分子・細胞のレベルから個体レベルまで、分子生物学的手法、電気生理学的手法、バイオイメージング法(Ca2+、GFPなどGFPなど)、細胞培養法、組織化学染色法、行動学的手法など多面的なアプローチを用いて解析しています。具体的なテーマは以下の通りです。
1.味・ニオイ・フェロモンの受容機構に関する解析
2.化学感覚情報の中枢処理機構の解析
3.化学感覚情報が情動行動におよぼす影響に関する神経科学的解析
4.化学感覚の発達と加齢変化
5.耳下腺唾液の分泌調節機構の解析